【2021Q2決算】シリコンウエハ大手の業績と今後の見通し《SUMCO》
シリコンウエハ大手、SUMCO(東証1部: 3436)の2021年第2四半期決算をまとめました。
この記事を読むと
- Q2業績の振り返り
- Q3業績予測
- 今後のウエハ受給・設備投資
- ライバル社の動向に対する見解
について知ることができます。
更新履歴
- 2022年4月23日:サムネイル更新
決算資料(参照資料)
以下、決算資料のダウンロード先です。
2021年第2四半期業績
2021Q2 | QoQ | YoY | |
---|---|---|---|
売上高 | 818億円 | +7.7% | +9.2% |
EBITDA | 247億円 | +18.8% | +8.3% |
EBITDAマージン | 30.3% | +2.9ppt | -0.2ppt |
営業利益 | 124億円 | +32.3% | +7.6% |
営業利益率 | 15.1% | +2.8ppt | -0.3ppt |
純利益 | 90億円 | +22.0% | +8.0% |
純利益率 | 11.0% | +1.3ppt | -0.1ppt |
EPS | 31.01円 | +22.3% | +8.4% |
- QoQ、YoYで共に増収増益
- 利益率・収益性の改善
ビジネス振り返り
ウエハ市場の振り返りと今後の受給についてのCEO見解を以下にまとめました。
200mmウエハ
- 2018年に5,700千枚
- ようやく5,900千枚に到達すると見込む
- 6,000千枚を超えるキャパはないと予想
- ただ生産性の向上により100千枚ずつ増える可能性もある
6,000千枚でしばらく天井に張り付くと予想しているようです。
300mmウエハ
- 今四半期で7,000千枚超え
- 300mmウエハは今後も続伸予測
- 2020年:8%程度の上昇
- 2021年:13 ~ 14%のプラス成長(見込み)
- 300mmも既に天井と見込む
顧客在庫推定
- 300mmウエハの在庫数が下がってきた
- ロジック向け300mmウエハは最も足りない時期と同水準に
- 0.5ヶ月分の在庫しか持っていない顧客も存在
- メモリ向けは若干余裕があるが、在庫は減少傾向
ロジック向け300mmウエハ不足は深刻のようですね。
300mmウエハ需要と能力増強
- 2022 ~ 2023年はどうやってもウエハが足りない
- 各社ブラウンフィールド投資の余地なしと予測
- グリーンフィールド投資一択だが、グリーンフィールドは時間がかかる
- 2024年を見込む
質疑応答
以下、質疑応答をカテゴリ毎にまとめました。
グリーンフィールド投資
Q-1
半導体不足が分かっているにも関わらず、なかなかグリーンフィールド投資が決定しない状況について
A-1
- 決まる寸前の状態
- 価格と契約期間にコミットメントすることが大前提
- 価格に関しては全体として5 ~ 6割増を期待
- たぶん買うだろうなという推測で増強投資は行わない
Q-2
グリーンフィールド投資をする際の資金調達方法について
A-2
- グリーンフィールド投資と言えど、SUMCOポリシーでは逐次増産
- 現預金が900億円程度(バランスシートより)
- 営業キャッシュフローが上期で500億円ぐらい出ているので通年で900 ~ 1,000億円を見込む
- ここら辺が資金元になる
- ブラウンフィールドでも過去の事例を見ると大体600億円を投資している
Q-3
エクイティによる調達が株式市場で心配されている
A-3
- 上場会社である以上、否定はできない
- 実際のところ調達方法についてはこれから考えていく
台GlobalWafersと独Siltronicの動向について
Q-1
台GlobalWafersと独Siltronicの合併により、彼らが中国の市場シェアを大きく増やすのではないかという心配について
A-1
- 中国がポリッシュトウエハ(以降、PW)を大量に使用しようとしている噂は聞いているが
- 我々は難易度の高い先端品ウエハを製造しており、その中でもエピタキシャルウエハ(以降、EW)の比率が高い
- 値下げ競争でシェアを取るようなビジネスは避けている
- SUMCOはPWの先端品も製造(シェアは低い)
→ つまりそこまで心配はしていない
今後のウエハ受給について
Q-1
独Siltronicが20億ユーロ規模の投資発表をしたことにより、株式市場でウエハ需給バランスに対する懸念が出ている。
2024年以降に各社一気にグリーンフィールド投資を実施すると仮定した場合、増設後の2024, 2025年のウエハ受給についてどのように考えているか。
A-1
- 最近装置納期が長くなっていて早急な増設はできない
- 足りない足りないと言っているのは先端品
- つまり製造できる会社は限られている
- 先端向けウエハは不足状態が続くと見込む
- SUMCOとしては価格と契約期間にコミットメントしてくれる顧客に優先的に供給
- 漏れた顧客はどこから調達するのか、むしろSUMCOが心配している状態(笑)
- 先端品を大量に消費する半導体会社は早めに手を打たなければならない
- 急激な増設ができない2024 ~ 2025年まで世界ウエハ需給は高止まりし、25年ぐらいまでスポット価格は上がり続ける
利益率の低さについて
Q-1
ここ数年のウエハ業界各社の業績を見ていると、製造難易度の高いウエハビジネスをしている会社の方が儲かっていないように見受けられる。
難易度の高い先端品ウエハビジネスを主としているSUMCOは損な役割をやっているのではないか?
EWの検査費用はPWより全然多く、その費用は今後も増大傾向にある。
EWの割合が多く、かつ技術で差別化しているのはわかるが、ちゃんと儲けにつなげられていないのではないか?
A-1
- EWの顧客は世界に大きい会社が3社あるのみ
- 3番手以降は小さい会社
- EWビジネスは安定していて、PWに比べて需要が大きく上下しない
- PWは急に30%伸びたり、突然0になる
- 2017, 2018年はPWが不足したことに対して、EWは安定的
- つまり相対的に見ても、今現在不足に陥ってるPWが儲かるようになったのは事実
- 難しいモノを作っているのに儲からず、簡単な方が儲かるという逆転現象が起こっている
- ただ日本でPWを作り始めたとして、コスト競争に陥ると勝てないので今後も技術難易度の高いウエハ製造にフォーカス
- EWの顧客はSUMCOへのコミットメントが年々深くなっており、その辺も踏まえてウエハ値上げ等のご理解をいただけるかなと考えている
2021年第3四半期業績(予測)
2021Q3 | QoQ | YoY | |
---|---|---|---|
売上高 | 860億円 | +5.1% | +20.1% |
営業利益 | 125億円 | +0.8% | +88.7% |
営業利益率 | 14.5% | -0.6ppt | +5.2ppt |
EPS | 30.76円 | -0.8% | +164.3% |
業績推移(四半期別)
以下、今回の2021年第2四半期業績を追加した直近13四半期の業績推移になります。
売上高・EBITDA・営業利益
EBITDAマージン・営業利益率
EPS
まとめ
- Q2業績実績:QoQ、YoYで共に増収増益
- Q3業績予測:売上高860億円(QoQ +5.1% / YoY +20.1%)
- 300mmウエハは5G・スマートフォン・データセンター等の強い需要継続
- 特にロジック向け300mmウエハは最も足りない時期と同水準に
- グリーンフィールド投資の検討に着手
- グリーンフィールドの立上により新たな生産能力が追加されるまで需給はますます逼迫する見込み
- 200mmウエハも強い需要継続
- 人員増強による増産対応を行うも需給タイトな状況が続く見通し
では、この辺で。
拜拜~