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半導体専業ファウンドリ大手4社の2021年業績振り返り《TSMC、UMC、GlobalFoundries、SMIC》

半導体専業ファウンドリ大手4社(TSMC、UMC、GlobalFoundries、SMIC)の2021年第4四半期決算が出揃いましたので各社2021年通年の業績を振り返っていきます。

 

この記事は半導体専業ファウンドリ大手4社の

  • 2021年通年業績
  • 2021年ビジネスハイライト

についてまとめています。

 

 

2021年前半時点で業界最大手であるTSMCの製造ラインは2022年末まで予約が埋まっているという報道があり、さらに強い市場需要を背景に台湾ファウンドリ勢は度重なる値上げを実施しました。

 

TSMCと比較して利益率の低い水準にあったUMC、GlobalFoundries、SMICの3社にとっては利益率が大きく改善した1年になりました。

 

特に赤字の続いていたGlobalFoundiesは黒字転換し、そして去年ニューヨーク証券取引所にIPO上場しました。

 

そして今週から2022年第1四半期決算シーズンが始まり、木曜には半導体ファウンドリ最大手TSMCのQ1決算があります。

 

半導体メモリ大手MicronのFQ3決算では、中国ロックダウンの影響もあったせいか、PC、スマホの需要減速を指摘していました。

 

本記事を読んで2021年の各社業績を頭に入れておくと、2022年第1四半期決算カンファレンスコールにすんなり入っていけると思います。

 

更新履歴

  • 2022年4月23日:サムネイル更新

 

 

2021年業績

売上高

 

  Q1 Q2 Q3 Q4 通年
TSMC 3,624
QoQ +0.3%
YoY +16.7%
3,722
QoQ +2.7%
YoY +19.8%
4,147
QoQ +11.4%
YoY +16.4%
4,382
QoQ +5.7%
YoY +21.2%
15,874

YoY +18.5%
UMC 471
QoQ +4.0%
YoY +11.4%
509
QoQ +8.1%
YoY +14.7%
559
QoQ +9.8%
YoY +24.6%
591
QoQ +5.7%
YoY +30.5%
2,130

YoY +20.5%
GF 1,418
QoQ +33.5%
YoY +2.8%
1,620
QoQ +14.3%
YoY +22.9%
1,700
QoQ +4.9%
YoY +55.8%
1,847
QoQ +8.7%
YoY +73.9%
6,585

YoY +35.7%
SMIC 1,104
QoQ +12.5%
YoY +22.0%
1,344
QoQ +21.8%
YoY +43.2%
1,415
QoQ +5.3%
YoY +30.7%
1,580
QoQ +11.6%
YoY +61.1%
5,443

YoY +39.3%

売上高単位:TSMC・UMCはNT$億、GF・SMICはUS$M

 

 

以下、過去3年間の売上高成長率推移を示したグラフになります。

 

f:id:yu-money:20220409131953p:plain

 

粗利益・粗利益率

 

  Q1 Q2 Q3 Q4 通年
TSMC 1,898
QoQ -2.8%
YoY +18.0%
1,862
QoQ -1.9%
YoY +13.1%
2,128
QoQ +14.3%
YoY +11.7%
2,308
QoQ +8.5%
YoY +18.2%
8,195

YoY +15.2%
UMC 125
QoQ +15.1%
YoY +53.8%
159
QoQ +27.4%
YoY +55.1%
205
QoQ +29.0%
YoY +110.3%
231
QoQ +12.5%
YoY +112.9%
721

YoY +84.8%
GF 99
QoQ --
YoY --
267
QoQ +169.7%
YoY --
300
QoQ +12.4%
YoY +329%
385
QoQ +28.0%
YoY +276%
1,013

YoY +242%
SMIC 250
QoQ +41.5%
YoY +7.1%
405
QoQ +61.9%
YoY +62.9%
468
QoQ +15.5%
YoY +78.6%
553
QoQ +18.1%
YoY +212.7%
1,676

YoY +82.0%

粗利益単位:TSMC・UMCはNT$億、GF・SMICはUS$M

GFのQ1 QoQ/YoYとQ2のYoYは対象の前年データがないので未記載

 

 

以下、過去3年間の粗利益率推移になります。

 

f:id:yu-money:20220409131935p:plain

 

営業利益・営業利益率

 

  Q1 Q2 Q3 Q4 通年
TSMC 1,505
QoQ -4.2%
YoY +17.1%
1,457
QoQ -3.2%
YoY +11.1%
1,710
QoQ +17.4%
YoY +14.0%
1,828
QoQ +6.9%
YoY +16.3%
6,499

YoY +14.7%
UMC 76
QoQ +35.7%
YoY +123.3%
113
QoQ +48.4%
YoY +93.5%
151
QoQ +33.9%
YoY +112.3%
176
QoQ +16.4%
YoY +213.8%
517

YoY +134.9%
GF (95)
QoQ +80.7%
YoY +76.5%
41
QoQ +143.2%
YoY +110.0%
81
QoQ +97.6%
YoY +123.1%
142
QoQ +75.3%
YoY +128.9%
168

YoY +2.6%
SMIC 125
QoQ +624.4%
YoY +163.4%
538
QoQ +331.6%
YoY +731.2%
310
QoQ -42.4%
YoY +69.7%
420
QoQ +35.5%
YoY +2,342.4%
1,393

YoY +346.5%

営業利益単位:TSMC・UMCはNT$億、GF・SMICはUS$M

 

 

以下、過去3年間の営業利益率推移になります。

 

f:id:yu-money:20220409131944p:plain

 

EPS

 

  Q1 Q2 Q3 Q4 通年
TSMC 5.39
QoQ -2.2%
YoY +19.5%
5.18
QoQ -3.9%
YoY +11.2%
6.03
QoQ +16.1%
YoY +13.8%
6.41
QoQ +6.3%
YoY +16.3%
23.01

YoY +15.2%
UMC 0.85
QoQ -7.6%
YoY +347.4%
0.98
QoQ +15.3%
YoY +78.2%
1.43
QoQ +68.2%
YoY +90.7%
1.30
QoQ -9.1%
YoY +41.3%
4.57

YoY +88.8%
GF (0.25)
QoQ +76.2%
YoY +57.6%
(0.06)
QoQ +76.0%
YoY +87.2%
0.07
QoQ +216.7%
YoY +112.1%
0.18
QoQ +157.1%
YoY +117.1%
(0.05)

YoY +81%
SMIC 0.02
QoQ -33.3%
YoY +100.0%
0.09
QoQ +350.0%
YoY +350.0%
0.04
QoQ -55.6%
YoY +33.3%
0.07
QoQ +75.0%
YoY +133.3%
0.22

YoY +144.4%

EPS単位:TSMC・UMCはNT$、GF・SMICはUS$

 

2021年ビジネス振り返り

 

TSMC

半導体ファウンドリ世界最大手のTSMC(TWSE: 2330、NYSE: TSM)。

 

プロセスノード別売上高推移

 

f:id:yu-money:20220409135411p:plain

 

プロセスノード別売上高占有率推移

 

f:id:yu-money:20220409135402p:plain

 

  • 2021年第4四半期の売上高に占める5nm、7nmの割合はそれぞれ23%、27%
  • 5/7nmから成る最先端テクノロジーの売上高比率が50%を占める
  • 2021年通年では19%、31%

 

TSMC製5nmプロセス(N5)は現時点における世界最高のPPA(Performance, Power and Area)を提供する最先端テクノロジーで、立ち上げから3年目を迎えたN5の売上高は単調に増加しています。

 

スマホ、HPC(High Performance Computing)からの引き合いが強く、次世代テクノロジーであるN4P、N4Xを含めたN5ファミリーはTSMCにおける息の長いビジネスとなるようです。

 

 

また2021年は自動車向けIC不足の対策に活動的に取り組んだ一年でした。

 

取り組み内容及び成果を以下にまとめました。

  • 状況に応じて製造キャパを再配置 → 自動車向けMCU(マイコン)を多く製造
  • 2021年上半期は2020年上半期比で+30%
  • 2021年通年では前年比+51%
  • パンデミック前の2018年との比較では+30%
  • TSMCを利用する顧客の車載向けIC不足は徐々に軽減

 

UMC

半導体ファウンドリ2021年売上高ランキングでは3番手となっていますが、専業ファウンドリ(半導体受託製造ビジネスのみを行う会社)では世界2位となるUMC(TWSE: 2303、NYSE: UMC)。

3番手と言いながらも、後述するGlobalFoundries、SMICとは同程度の売上規模になりますので3番手に3社という感じです。

 

これら3社は上位のTSMCとSamsungとは異なりレガシープロセスをビジネスの中核としています。

 

プロセスノード別売上高推移

 

f:id:yu-money:20220409135435p:plain

 

プロセスノード別売上高占有率推移

 

f:id:yu-money:20220409135425p:plain

 

  • 2021年第4四半期の売上に占める22/28nmの割合は20%
  • 28nmの2021年売上高成長率は+75%
  • 40nm以下が38%を占める
  • 2021年通年では22/28nmの収益は20%

 

2021年通年売上高は前年比で20.5%増加しました(2021年売上高一覧表参照)。

 

28nmプロセスの2021年通年売上高は前年比+75%と記録し、ウエハASP(平均販売価格)全体を強化し、5G、AIoT、及び自動車のメガトレンドに関連する力強いチップ需要を示しています。

 

 

2021年通年粗利益率 YoY +11.7ppt / 営業利益率 YoY +11.8ppt

 

  • 2021年通年粗利益:YoY +84.8%
  • 粗利益率:22.1% → 33.8%へ改善(+11.7ppt)
  • 2021年通年営業利益:YoY +134.9%
  • 営業利益率:12.5% → 24.3%へ改善(+11.8ppt)

 

2021年は2020年に続き利益率が大きく改善した一年となりました(粗・営業利益率推移グラフ参照)。

特に、28nmプロセスからの収益急増が営業利益の大幅増加に貢献したようです。

 

GlobalFoundries

AMDからスピンオフした会社で、去年末にニューヨーク証券取引所へIPO上場しました。ティッカーシンボルは$GFS。

 

 

2021Q4売上高 QoQ +8.7% / YoY +73.9%

 

収益性改善の主要因

  • ウエハ生産量の増加
  • ASP(平均販売価格)の上昇
  • ウエハ以外の収益増加

 

Q4でのウエハ出荷枚数は約622,300枚で、QoQ +2%

ウエハ1枚あたりの平均価格はQoQ +3%

価格上昇の要因として

  • LTA(長期契約)の価格上昇
  • 全体的に非常に建設的な取引価格環境
  • 製品ミックスの改善

を挙げていました。

 

プロセスノード別売上構成は公表されておりませんでしたので、前年比売上高成長率の最も高かった自動車向けビジネスについて振り返りたいと思います。

 

2021年通年の自動車向け売上高 YoY +187%

 

GlobalFoundriesの自動車向けビジネスは売上全体の約5%(2021年実績ベース)で、売上の半分を占めるモバイルデバイスビジネスに対して小さいビジネスですが、2021年に前年比で187%増となりました。

モバイルデバイスビジネスは前年比+38%でした。

 

過去数年に渡って進めてきたADAS、安全アプリケーション、インフォテインメント向けの新規設計が増加したことに起因しているようです。

フォード、BMW、ボッシュとのパートナーシップ発表も重要なイベントだったと思います。

 

さらに4DレーダーやEV用バッテリーマネジメント分野で複数の顧客が2023年中の立ち上げを計画しているようです。

 

SMIC

半導体ファウンドリの中国最大手であり、香港証券取引所と上海証券取引所に上場しているSMIC。

 

プロセスノードポートフォリオはUMCと似ており、レガシープロセスをコア収入としています。

 

プロセスノード別売上高推移

 

f:id:yu-money:20220409135505p:plain

 

プロセスノード別売上高占有率推移

 

f:id:yu-money:20220409135455p:plain

 

UMC同様にレガシープロセスをコア収入としていますが、プロセス別売上比率の特徴はUMCと異なります。

 

SMICは

  • 55/65nm
  • 0.15/0.18um

が大部分を占めています。

 

その次に

  • 40/45nm
  • 14/28nm

という感じになっております。

 

プロセスポートフォリオ、会社規模が近いこともあって、売上高成長率や利益率推移も似ています。

 

 

2021年通年粗利益率 YoY +7.2ppt / 営業利益率 YoY +17.6ppt

 

  • 2021年通年粗利益:YoY +30.8%
  • 粗利益率:23.6% → 30.8%へ改善(+7.2ppt)
  • 2021年通年営業利益:YoY +346.5%
  • 営業利益率:8.0% → 25.6%へ改善(+17.6ppt)

 

2021年通年売上高は前年比+39%と大幅増収、そして前述した利益・利益率等の多くの財務諸表が過去最高を記録しました。

 

決算カンファレンスコールでは、「米国政府からエンティティリストに追加されたことがSMICの成長・発展に多大な障害をもたらした」とコメントしつつも、「世界的な半導体不足と自国生産への強い需要にて素晴らしい業績をあげることができた」とまとめていたのが印象的でした。

 

まとめ

  • 強い市場需要を背景に度重なる値上げを実施したファウンドリ各社
  • 立ち上げから3年目を迎えたTSMCの最先端プロセス5nmの売上高は単調に増加
  • 5/7nmから成る最先端テクノロジーの売上高比率は50%となる
  • UMC、GlobalFoundries、SMICの3社にとっては利益率が大きく改善した1年
  • UMCは通年利益率が粗利益・営業利益共に前年比約12ppt上昇
  • SMICは通年粗利益率、営業利益率がそれぞれ前年比で7.2ppt、17.6ppt上昇
  • GlobalFoundiesは黒字転換&IPO上場

 

では、この辺で。

拜拜~