たいかぶ.com

Investing in High-Tech

【2022Q2決算】半導体セクター注目ポイント

今週木曜7/14の半導体ファウンドリ最大手TSMC(TWSE: 2330、NYSE: TSM)の第2四半期決算に始まり、7/20にASML(NASDAQ: ASML)、Texas Instruments(NASDAQ: TXN)と半導体企業の4 ~ 6月第2四半期決算シーズンに入っていきます。

 

今回は半導体セクターの第2四半期決算注目ポイントについてまとめました。

 

 

Micron FQ3決算振り返り

先日行われた半導体メモリ大手Micron(NASDAQ: MU)のFQ3(3 ~ 5月期)決算は

  • 売上高 QoQ +11% / YoY +16%
  • 営業利益 QoQ +18% / YoY +67%

と前期比、前年同期比ともに増収増益となりました。

 

サーバー / データセンター / PC / スマホの成長鈍化

ビジネス別に振り返ると

  • 自動車 / 産業機械 / SSDは高い売上高成長率を維持(YoY +30%前後)
  • サーバー / データセンター / PC / スマホは成長率鈍化
  • 特にスマホ向けメモリ事業は前年同期比マイナス

となり、決して良い決算とは言い難い結果となりました。

 

Micronの稼ぎ頭はサーバー、データセンター及びPCで構成するコンピュート&ネットワーキング事業とスマホをメインとするモバイル事業であり、Micron全体の売上高のそれぞれ45%、25%を占めております。

合計で70%を占めるこの2事業の売上高成長鈍化の影響は大きいものとなります。

 

データセンターやコンシューマ製品需要低下に対応して出荷削減

FQ4のガイダンスは前期比、前年同期比ともに減収減益の見込みとなっております。

 

中国での個人消費の弱さとデータセンター顧客側での経済の行き先不安感から、DRAM及びNANDの出荷調整の方針が出されました。

 

データセンター需要は依然として好調ではありますが、半導体以外の物不足による半導体余りが懸念されます。

 

自動車及び産業機械向けは引き続き強いようです。

 

ポイント①: メモリ以外の半導体デバイス需給

台湾の証券取引所に上場している企業は通年、半期、四半期毎の財務報告に加えて、月次の運営状況開示が規定されております。

 

ということで四半期決算よりも前に四半期売上高の算出が可能となります。

 

以下に主要な台湾半導体企業の前四半期(第1四半期)と第2四半期の売上高と売上高成長率をまとめました。

 

主要な台湾半導体企業の第2四半期売上高及び売上高成長率

 

主要な台湾半導体企業の第1四半期売上高及び売上高成長率

 

第1四半期では一部の企業を除き、概ね前年同期比30%後半 ~ 40%の売上高成長率を達成していたわけですが、第2四半期では明暗の分かれる結果となりました。

 

もちろん売上高成長率だけで企業業績の良し悪しを語るには材料が乏しく決算内容の精査は必須でありますので、これまで同様に重要な決算については本サイトにてまとめていきます。

 

上記表の注目ポイントは

  • コンシューマ製品需要鈍化
  • データーセンターが引っ張るチップレット需要
  • コンシューマ鈍化と好調な自動車・データセンターの狭間で揺れるファウンドリ

 

コンシューマ製品需要鈍化

MediaTek、RealTek、NovaTek、Phisonの大手ファブレスICデザインハウスの前年同期比売上高は大きく鈍化しました。

DDI(ディスプレイドライバIC)のNovaTekは前年同期比マイナス成長。

 

ただコンシューマ製品需要鈍化に関しては第1四半期より指摘されておりますので特にサプライズ感はありません。

ロシアウクライナの戦争行く先は未だに不透明であり、かつ景気後退懸念も重なってしばらくの消費冷え込み覚悟は必要かと思われます。

 

  • 今後のコンシューマ製品需要動向
  • 製造量の調整

 

ここら辺が注目ポイントになってくるかと思われます。

 

データーセンターが引っ張るチップレット需要

データセンター需要は2022年通年で強いとしながらも、メモリとその他で状況は異なりそうです。

 

私の印象は

  • メモリ・ストレージ: 足りてる
  • CPU・GPU: 引き合い強いが不足感はない
  • ネットワーク: 供給不足

の通りです。

(ぶっちゃけメモリはいつの時代も足りてます笑)

 

データセンター向け半導体に用いられる

  • チップレット技術: GUC YoY +63%
  • 先端パッケージング向け基板: Unimicron YoY +48%

の決算には注目しております。

 

コンシューマ鈍化と好調な自動車・データセンターの狭間で揺れるファウンドリ

ポイント③にて後述。

 

ポイント②: 在庫

決算カンファレンスコールを聞いていると

  • チップ在庫→増加傾向
  • ウエハ在庫→減少傾向(ロジックは過去最低水準)

の印象を受けます。

 

現状のシリコンウエハ需給に関しては

  • 200mmウエハ: 供給量頭打ちで需要に全く追いつかない
  • 300mmウエハ: 各社のブラウンフィールド投資による追加増産能力も既に頭打ちを示唆

の状況です。

グリーンフィールド投資による増産能力の大幅向上は少なくとも2023年以降になっておりますが、ここにきてサプライチェーンの制約やロジスティクス懸念による設備投資計画の遅延が浮上してきており、シリコンウエハ不足解消は一筋縄ではいかないと考えております。

 

以上をまとめると、シリコンウエハの現状需給は「需要 ≫≫≫≫ 供給」のようになっており、例え需要が鈍化しても「需要 ≧ 供給」で落ち着くと予想しております。シリコンウエハの過剰供給については個人的には心配しておりません。

 

シリコンウエハ大手2社の第1四半期決算は以下記事にてまとめております。

 

taikabu.com

 

一方、半導体チップに関しては顧客側での在庫積み上げ懸念が浮上しております。

(前述したMicronだけでなく、Samsungも同様の旨を明かす。)

 

この2社はIDMで自社設計・製造ですがファブレス企業も同様の状況であると考えるのが普通ですので、そうなってくるとファウンドリへのしわ寄せが危惧されます。

 

ポイント③: ファウンドリは舵取りの難しい局面

前述の表の通り、ファウンドリ大手2社TSMC、UMCの第2四半期売上高は前年同期比40%増となりました。

PC・スマホ出荷量鈍化、その他様々なサプライチェーン問題に直面している中で非常に素晴らしい売上高だと思います。

 

間違いなく今年の半導体業界全体の成長を牽引しているファウンドリ市場ですが、前述の通り在庫調整の影響をどれぐらい受けるのか決算で注視必要だと思います。

 

まとめ

今回は簡単に半導体セクターの第2四半期決算注目ポイントについてまとめました。

 

  • メモリは今後出荷削減が実施される
  • チップレットはデーターセンターが牽引
  • チップ在庫 → 積み上げ傾向
  • ウエハ在庫 → ひたすら足りない状況
  • ファウンドリの第2四半期売上高成長は素晴らしい
  • 製造装置の納期遅れ、チップの需要低下ぎ齎すファウンドリへのしわ寄せ懸念

 

では、この辺で。

拜拜~