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【2022CQ1決算】スマホSoC大手2社の業績と今後の見通し《Qualcomm、MediaTek》

スマートフォンSoC大手2社(Qualcomm、MediaTek)の2022年第1暦四半期決算まとめ記事です。 

 

  • 2022年第1暦四半期業績実績
  • 2022年第2暦四半期業績見通し
  • スマートフォン市況

についてまとめています。

 

2022年のスマートフォン世界出荷台数予測は当初の微増から横ばい、もしくは微減に下方修正されました。

(Qualcomm、MediaTek同じ見解)

 

しかしながら、両社の1 ~ 3月期スマートフォンセグメントの売上高成長率は前年同期比で

  • Qualcomm:+56%
  • MediaTek:+28%

と、弱気なスマートフォン出荷台数に反する好決算を叩き出し、今後の業績見通しも悪くはないです。

 

 

スマートフォン向けプロセッサ市場で起きていることとは何なのか?

 

 

そんな半導体デバイス市場の、そしてスマートフォン市場に多大な影響力を持つファブレス半導体大手2社、QualcommとMediaTekの決算カンファレンスコールを読み解いていきたいと思います。

 

 

2022年第1暦四半期業績

Qualcommは9月決算、MediaTekは12月決算ですので、1 ~ 3月期決算は

  • Qualcomm → FQ2
  • MediaTek → Q1

となっております。

 

Qualcomm

 

  2022FQ2 QoQ YoY
売上高 11,158 +4.3% +40.7%
EBT 4,255 -1.2% +68.4%
EPS 3.21 -0.6% +68.9%

全てNon-GAAP

売上高・EBT単位:US$ in Millions

EPS単位:US$

 

 

MediaTek

 

  2022Q1 QoQ YoY
売上高 1,427 +10.9% +32.1%
粗利益 718 +12.5% +47.9%
営業利益 365 +22.7% +80.5%
EPS 21.02 +10.7% +29.7%

売上高・粗利益・営業利益単位:NT$億

EPS単位:NT$

 

売上高成長率推移

 

Qualcomm

 

 

MediaTek

 

 

利益率推移

 

 

  • Qualcomm:QCT部門のEBTマージン
  • MediaTek:営業利益率

 

Qualcomm

ファブレス半導体企業売上高ランキング1位のQualcomm(NASDAQ: QCOM)

 

FQ2業績ハイライト

売上高

  • US$11.2B
  • YoY +41%

 

EPS (Non-GAAP)

  • US$3.21
  • YoY +61%

 

売上高とEPS、共にガイダンスの上限を上回り、過去最高を記録しました。

 

部門別業績

 

  2022FQ2 QoQ YoY
Q
C
T

売上高 9,548 +% +52%
EBT 3,340 +% +111%
EBTマージン 35% ppt +10ppt
Q
T
L

売上高 1,580 +% -2%
EBT 1,154 +% -3%
EBTマージン 73% ppt -1ppt

単位(%、ppt以外):US$ in Millions

EBT:税引前利益(Earnings Before Taxes)

 

Qualcommの事業は

  • 半導体チップセット部門(QCL: Qualcomm CDMA Technologies)
  • 知的財産・ライセンス部門(QTL: Qualcomm Technology Licensing)

から成ります。

 

売上規模はQCT部門が大きいですが、QTL部門は特許料からなるビジネスのため利益率が高いのが特徴です。

 

QCT部門

売上高 US$9.5B / YoY +52%

 

  • 過去最高益
  • 自動車用設計の受注は現在US$16B超
  • 前期比でUS$3B以上増加
  • RFフロントエンドの売上高YoY +28%
  • 携帯端末の売上高YoY +56%

 

QCT部門アプリケーション別売上高推移

 

 

QCT部門アプリケーション別別売上高占有率推移

 

 

 

EBT US$3.3B / YoY +111%

 

  • 過去最高を記録
  • 前年同期比で倍増
  • EBTマージンはガイダンスを上回る
  • 前年同期比+10ポイント

 

QCT部門(携帯端末)

売上高 US$6.3B / YoY +56%

 

SamsungやXiaomi、Oppo、Vivoといった大手スマホOEMとの継続的なビジネスにより過去最高の売上高を達成しました。

 

主要因

  • プレミアム端末の販売台数増加
  • 供給環境改善

 

特に、Samsungの旗艦機Galaxy S22でのシェア拡大が大きかったようです。

 

Samsungの最新フラグシップスマートフォン「Galaxy S22」では2種類のプロセッサを販売地域によって使い分けて搭載しています。

  • Samsung自社製のExynos
  • QualcommのSnapdragon

 

前機のS21では40%、Qualcommのプロセッサが搭載されていましたが、最新機のS22では75%に搭載シェア拡大したとのことです。

 

QCT部門(RFフロントエンド)

売上高 US$1.2B / YoY +28%

 

主要OEM企業におけるQualcomm製品の採用増加がありました。

 

QCT部門(IoT)

売上高 US$1.7B / YoY +61%

 

  • コンシューマ
  • エッジ・ネットワーキング
  • インダストリアル(産業)

の3つのカテゴリー全てが力強い成長を遂げました。

 

中でも産業向けIoTは、①接続性と②エッジでの高度な処理、の両方に対する需要により他のカテゴリーに比べて成長率が高かったようです。

 

特に今日のwithコロナ時代において、倉庫、物流、ヘルスケア、さらにロボティクス・プラットフォームに対する需要の加速が著しいとのことです。

 

QCT部門(自動車)

売上高 US$0.339B / YoY +41%

 

自動車セグメントは過去最高の売上高を記録しました。

 

Snapdragon Digital Chassis(スナップドラゴン・デジタル・シャシー)採用による設計受注がUS$16Bを越えており、今後の売上計上に期待できます。

 

Snapdragon Digital Chassisは、テレマティクスや通信、デジタルコックピット、先進運転支援システム(ADAS)といった各種機能を提供するデジタルプラットフォームのことです。

テレマティクスは、Telecommunication(通信)とInformatics(情報科学)を組み合わせた造語です。インターネットを使っやリアルタイムな情報サービスを提供することをテレマティクスと言います。

 

 

車載ビジネス展望①:Arriver買収による競争力強化

 

今四半期に、スウェーデンの自動車部品会社ヴィオニアの自動運転システムソフトウエア開発部門「Arriver(アーリバー)」の買収が完了しました。

Arriver買収により自動車メーカーやTier-1サプライヤーに対して競争力のあるADASソリューションの提供能力強化を図るとのことです。

 

 

車載ビジネス展望②:大手自動車メーカーBMWやStellantisとの長期の技術連携

 

  • BMWの自動運転ソフトウェアをSnapdragon Ride Platformに拡張
  • 他の自動車メーカーへの提供を示唆
  • Stellantis社の14の自動車ブランドにSnapdragon Automotive Cockpit Platform搭載予定

 

QTL部門

売上高 US$1.6B / EBTマージン 73%

 

  • ガイダンスの中間値を上回る
  • 低位ユニットが若干減少
  • 製品ミックス好転

 

スマートフォンの販売台数減少がライセンス収入に影響を及ぼしていますが、製品ミックス強化により相殺され、成長率ほぼ横ばい(厳密には微減)となっています。

 

MediaTek

スマホSoCの出荷数でQualcommを上回りNo.1となったMediaTek(TWSE: 2454)

 

2022Q1業績ハイライト

売上高 NT$142,7B QoQ +10.9% / YoY +32.1%

 

  • ガイダンスを上回る
  • 3部門全てプラス成長を達成(後述)

 

 

粗利益率 50.3% QoQ +0.7ppt / YoY +5.4ppt

 

フラグシップSoC(Dimensity 9000シリーズ)市場投入によるプロダクトミックス改善により利益率が改善しました。

 

今四半期にて粗利益率50%越えを達成しましたが、今後はコスト増の影響を受けて49%をガイダンスとしています。

 

 

事業別売上高

 

  2022Q1 QoQ YoY
モバイルフォン 76.5 +13% +28%
スマートエッジ
プラットフォーム
55.7 +7% +35%
パワーIC 11.4 +21% +52%

単位(%、ppt以外):NT$ Billions

 

 

事業別売上高推移

 

 

事業別売上高占有率推移

 

 

今四半期より報告セグメントが変更されており

 

変更前

  • モバイルフォン
  • IoT / コンピューティング
  • スマートホーム
  • パワーIC

 

変更後

  • モバイルフォン
  • スマートエッジプラットフォーム
  • パワーIC

となっております。

 

モバイルフォン事業

MediaTekの売上全体の半分以上を占めるコア事業です。

3G/4G/5Gスマートフォン及びフィーチャーフォンがエンドプロダクトになります。

 

 

売上高成長率 QoQ +13% / YoY +28%

 

売上高プラス成長要因

  • 5Gスマートフォンの出荷台数増加
  • フラッグシップ向けのSoC市場投入
  • 4Gのグローバル市場シェアをさらに拡大

 

スマートエッジプラットフォーム事業

MediaTekの売上全体の約4割を占めるモバイルフォン事業の次に大きい事業になります。

 

  • 有線・無線通信機器
  • スマート家電(TV、スピーカー等)
  • Arm-CPU搭載PC
  • IoT

などがエンドプロダクトになってきます。

 

 

売上高成長率 QoQ +7% / YoY +35%

 

市場ハイライト

  • Wi-Fi 6への移行
  • テレビやタブレットなどの製品がハイエンドソリューションへ移行

 

本市場もスマートフォン同様に成長軟化が指摘されていますが、ハイエンドソリューションへの移行トレンドがASP(平均販売価格)上昇と収益の成長性を後押しするようです。

 

パワーIC事業

売上高成長率 QoQ +21% / YoY +52%

 

MediaTekの売上高全体の10%弱を占める本事業ですが、今四半期は他の事業に比べて非常に高い成長率を達成しました。

 

  • 5GやWi-Fi 6への移行

及び

  • 車載用急速充電器
  • 産業機器

市場の急速な成長によって、パワーICソリューションの需要が堅調に推移しました。

 

スマートフォン市況

スマートフォン市場は需要がやや軟化していることもあり、2022年の世界出荷台数は2021年比で横ばいの約13.5億台になると見込まれています。ただ5G対応スマートフォンに限って言えば、2022年は前年比で30%増加の約6.6億 ~ 6.8億台予測のようです。

 

上記予測を踏まえた上で

  • 中国のロックダウン影響
  • 予測出荷台数マイナス成長 vs 好業績

についてまとめました。

 

中国のロックダウン影響

中国のロックダウンにより下位機種の出荷台数が若干減少しました。

(次四半期(4 ~ 6月期)には台数の回復を見込んでいるようです。)

 

しかしながら

  • 携帯電話端末の世界販売台数における中国の割合は20%
  • プレミアム及びハイエンド機種の需要は依然として強い

によりQualcommやMediaTekへの影響は小さかったとしています。

 

特にQualcomm製Snapdragonシリーズはハイエンドスマートフォンの代名詞となっており、SamsungのGalaxy S22でのシェア拡大も相まって前年同期比56%増と大幅増収しました。

 

プレミアム及びハイエンド参入数年を迎えたMediaTekも5Gスマートフォン市場で徐々にシェア拡大しております。Qualcomm程ではないですが前年同期比30%増とスマートフォン需要減速が囁かれる中で十分と言える結果を残しました。

 

5G SoCは高い

プレミアム及びハイエンドスマートフォン、とりわけ5G対応機種になると半導体IC側に要求される性能も格段にアップします。

 

さらにスマートフォンOEM同士の競争激化も加わって

  • CPU
  • GPU
  • AI
  • オーディオ
  • ビデオ
  • セキュリティ

等々のスマートフォンユーザーが体験できる分かり易い性能が半導体IC側への要求激化に繋がってきます。

 

こうなってくると単体の半導体チップセットに搭載されるシリコンの量(もしくはシリコンコンテンツ)が増え、結果として価格的にも性能的にもリッチなSoCが出来上がり、それがそのまま業績となって現れています。

 

5G対応SoCの販売価格が高い原因はサプライチェーン逼迫によるものではなく、シリコンコンテンツ増加によるものとされていることから、今後すぐに価格が下がっていくことは難しいと思われます。

 

2022年第2暦四半期ガイダンス

 

Qualcomm

 

  Q3FY22
(予測)
Q2FY22
(実績)
Q3FY21
(実績)
売上高 10.5 ~ 11.3
QoQ -6.2% ~ +0.9%
YoY +31.3% ~ +41.3%
11.2 8.0
EPS 2.75 ~ 2.95 3.21 1.92
Q
C
T

売上高 9.1 ~ 9.6
QoQ -4.7% ~ +0.5%
YoY +40.6% ~ +48.4%
9.55 6.47
EBT
マージン
31% ~ 33% 35% 28%
Q
T
L

売上高 1.4 ~ 1.6
QoQ -11.4% ~ +1.3%
YoY -6.0% ~ +7.4%
1.58 1.49
EBT
マージン
69% ~ 73% 73% 71%

売上高単位:US$ in Billions

EPS:Non-GAAPベース

 

 

QTL

中国におけるCOVID-19関連の影響がFQ3までに終了するものと仮定した場合の数値

 

 

QCT

  • IoT/自動車:前期比で一桁台半ばの増収
  • 携帯端末/RFフロントエンド:季節性により前期比で減収

 

MediaTek

 

  22Q2
(予測)
22Q1
(実績)
21Q2
(実績)
売上高 147 ~ 157
QoQ +3% ~ +10%
YoY +17% ~ +25%
142.7 125.7
粗利益率 47.8% ~ 50.5% 50.3% 46.2%
営業利益率 22% ~ 26% 25.6% 22.9%

売上高単位:NT$ in Billions

想定為替レート:US$1 = NT$28.5

 

  • 3つの事業全てで前年同期比プラス成長見込み
  • モバイルフォン事業のフラッグシップモデル(Dimensity 9000シリーズ)及びハイエンドモデル(Dimensity 8000シリーズ)が好調に推移
  • 4G/5G需要やWi-Fiビジネスの成長が堅調

 

まとめ

  • Qualcommの携帯端末部門の売上高成長率 YoY +56%
  • MediaTek:YoY +28%
  • 主要因:プレミアム端末の販売台数増加
  • Samsung Galaxy S22のシェア拡大の寄与大きい(Qualcomm)
  • 5G対応SoCは販売価格が高いため出荷量が停滞しても増収を見込める
  • Qualcommは今後供給量が回復してくるため5G市場シェア争い激化
  • IoT市場はwithコロナ時代の需要と相性が良く、市場成長が著しい
  • キーワードは倉庫、物流、ヘルスケア、ロボティクスプラットフォーム
  • 移動通信分野は5G及びWi-Fi 6への移行が販売価格上昇と収益の成長性を後押し

 

では、この辺で。

拜拜~