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【2022Q1決算】シリコンウエハ大手2社の業績と今後の見通し《SUMCO、GlobalWafers》

シリコンウエハ大手2社(SUMCO、GlobalWafers)の2022年第1四半期決算が出揃いましたので各社の業績と今後の見通しについてまとめました。

 

 

コロナショックによる半導体特需以降、慢性的な供給不足に陥っている半導体の基礎素材"シリコンウエハ"。

 

供給面に目を向けると、シリコンウエハメーカー各社は過去の過剰増産投資によるウエハ価格買い叩かれをトラウマに持っており、今回の半導体特需による顧客からの強い増産要請にも慎重な姿勢を見せております。

各社とも現在は既存工場の拡張による増産を実施中ですがこれらによる生産能力増加では補えないほど需要が強く、顧客に対して長期契約と前払いを前提としたグリーンフィールド投資に踏み切っております。しかしながらグリーンフィールド投資は増産開始までに時間がかかり、新規工場が立ち上がるのは2023年からと言われております。また地政学によるロジスティクス懸念により設備投資計画の遅延が浮上してきております。

シリコンウエハの製造装置だけでなく、工場内のワイヤーハーネスや配管といった従来であれば不足に陥ることが考えられなかった品まで納期遅延を余儀なくされている状況です。

 

一方で足元のウエハ需要は日々強くなっており、データセンター、5Gスマホ、EVといったメガトレンドが今日の半導体市場の成長を後押ししております。さらにインターポーザやウエハ結合といった半導体の高性能化に必要不可欠な新しいトレンドがウエハ需要をさらに加速させており、今後ますますの強い引き合いが予測されます。

 

この記事ではシリコンウエハ大手2社の

  • 2022年第1四半期業績
  • ビジネスハイライト
  • シリコンウエハ生産能力状況
  • シリコンウエハ市況
  • 今後の設備投資動向

についてまとめています。

 

 

2022年第1四半期業績

 

  SUMCO GWC
売上高 1,004
QoQ +10.1%
YoY +32.3%
163
QoQ +3.5%
YoY +10.1%
営業利益 234
QoQ +56%
YoY +151.6%
58.9
QoQ +22.3%
YoY +49.1%
営業利益率 23.3%
QoQ +6.8ppt
YoY +11.0ppt
36.1%
QoQ +5.5ppt
YoY +9.4ppt
EBITDA 368
QoQ +21.5%
YoY +76.9%
18.02
QoQ -65.0%
YoY -64.3%
EBITDA
マージン
36.7%
QoQ +3.5ppt
YoY +9.3ppt
11.1%
QoQ -21.6ppt
YoY -23.0ppt
EPS 43.4
QoQ +4.1%
YoY +71.3%
4.0
QoQ -17.7%
YoY -35.1%

GWC: GlobalWafers Co., Ltd.

売上高・粗利益・営業利益単位: SUMCOは億円、GWCはNT$億

EPS単位: SUMCOは円、GWCはNT$

 

売上高成長率推移

 

シリコンウエハ大手2社の売上高前年同期成長率推移

 

営業利益率推移

 

シリコンウエハ大手2社の営業利益率推移

 

EBITDAマージン推移

 

シリコンウエハ大手2社のEBITDAマージン推移

 

第1四半期ビジネスハイライト

SUMCO

  • 営業利益が前年同期比で倍増
  • 装置の故障等がなくスムーズにウエハ生産を行えた

 

GlobalWafers

  • 2022年は顧客の前払い増加傾向
  • 今四半期は過去最高の前払金を記録(NT$331.1億)
  • 長期契約を結ぶ顧客も増加傾向

 

シリコンウエハ生産能力状況

本サイトでは2020年よりシリコンウエハ主要メーカーの決算まとめを行なっていますが、当時から各社生産ラインのフル稼働状態がずっと続いている状態です。

 

  • 200mmウエハ
  • 300mmウエハ

の生産能力状況について以下にまとめました。

 

200mmシリコンウエハ

 

200mmシリコンウエハ供給量推移(SUMCO決算資料より作成)

 

 

SUMCOの決算資料を参考にさせていただきますと、200mmウエハの供給量は2021年に600万枚で高止まりしている様子が伺えます。

これはシリコンウエハが売れないということではなくウエハ生産能力が既に限界に達しており、さらに生産したウエハも全て売り切った状態であるとのことです。

 

生産性向上による増産も限界を迎えているとのことで、生産能力拡張を行わない限りこれ以上供給量を増やすことは難しいようです。

したがって今年2022年も去年と同水準の600万枚を天井に張り付いて推移すると予測されています。

 

300mmシリコンウエハ

 

300mmシリコンウエハ供給量推移(SUMCO決算資料より作成)

 

 

ウエハメーカー各社設備投資を実施してきた300mmウエハについては去年後半から供給量の伸びが緩やかになっており、各社のブラウンフィールド投資による追加増産能力も既にフルになっていることを示唆しております。

 

300mmウエハの新規生産ラインは来年から再来年にかけて立ち上がる計画ですので、来年2023年はウエハが最も不足する年になると危惧されております。

 

シリコンウエハ市況

ウエハ在庫

コロナショックによる半導体特需以降、顧客のシリコンウエハ在庫水準は減少傾向です。

 

特にロジック向けウエハが深刻で過去最低水準まで落ちており、在庫期間は1か月を下回る状態とのことです。

 

シリコンウエハの引き合いが強いセクターとして

  • データセンター
  • スマートフォン
  • 自動車

が挙げられます。

 

 

TSMC(TWSE: 2330、NYSE: TSM)やAMD(NASDAQ: AMD)の2022年第1四半期決算からもデータセンター需要の強さは明らかです。

 

TSMC含むファウンドリ大手4社の2022年第1四半期決算内容は以下にまとめております。

 

taikabu.com

 

 

スマートフォンについては需要減速が指摘されておりますが、5G移行をベースとした半導体の高性能化を考えるとスマホ出荷台数減少をシリコンコンテンツ増加で相殺していく感じだと思われます。

 

したがってシリコンウエハ需要低下の懸念は限定的だと考えております。そもそも現状供給が追いついておりませんのでウエハが余ることは考えにくいです。

 

スマートフォン市況に関しては、スマホ向けアプリケーションプロセッサ大手2社、Qualcomm(NASDAQ: QCOM)とMediaTek(TWSE: 2454)の2022年第1四半期決算レビュー記事にてまとめております。

 

taikabu.com

 

 

ウエハ需給

ウエハ需要の旺盛なセクターを前述させていただきましたが、種別では

 

300mm → 化合物 → 200mm

 

の順でウエハ需要が強く、とにかく供給が需要に追いつかない状態が続いているようです(GlobalWafers決算より)。

 

300mmウエハについてはスポットで売り出す余裕がなく、ほとんどが長期契約向けの供給となっております。200mmウエハは長期契約にて交わした供給量に対して更に増やしたいという声が多い程度に逼迫状態が続いており、スポットでの供給はほぼゼロとのことです。

 

前述のシリコンウエハ生産能力状況と照らし合わせてみても

  • 需要が強い → 300mmウエハ
  • 不足感が強い → 200mmウエハ

といった感じでしょうか。

 

 

データセンターとスマホの5G移行、共に高性能な半導体が必要になってくるということで最先端プロセス向けの300mmエピウエハ(エピタキシャルウエハ、EW)に注力しているSUMCOには追い風になってきそうです。

 

最先端繋がりで話を広げさせていただくと、インターポーザやメモリ製造過程でのウエハ結合といった新しいトレンドがウエハ需要を更に押し上げている実態もあります。

具体的にはポリッシュトウエハ(PW)がこれら分野での引き合いが強く、これまでウエハを全然買ってこなかった顧客が突然大量発注してきているようです。

 

今後の設備投資動向

ウエハを作る装置だけでなくウエハ工場建に関連する幅広い品不足により設備投資の当初計画に対して遅れてる(遅れる可能性がある)様子が伺えます。

 

以下にSUMCOとGlobalWafersの設備投資進捗についてまとめました。

 

SUMCO

現在、国内及び海外工場の増産投資計画が進んでいます。

 

設備投資計画はスケジュール通りのようですが、ワイヤーハーネス、配管のような従来では不足に陥る事態が考えられなかった品までもが不足している状況で、さらに地政学によるロジスティクスの問題にも直面しており余談を許さない状況が続いているとのことです。

 

GlobalWafers

イタリア、デンマーク、米国、日本、韓国、そして台湾の6カ国で既存工場拡張と新工場建設による増産計画が進んでおります。

これらは2022 ~ 2024年までの増産計画になります。

 

ブラウンフィールド、グリーンフィールド投資各種の進捗は以下の通りです。

  • ブラウンフィールド: 予定通り
  • グリーンフィールド: 機器のリードタイム長期化により1 ~ 2四半期遅れる可能性あり

 

GlobalWafersのグリーンフィールド投資は1 ~ 2四半期遅れる可能性があるとのことで、なんだかんだスケジュール通りに増産計画が進んでいるSUMCOより事態は深刻であるように思えます。

 

まとめ

  • 作っても作っても全て売れてしまう現在のシリコンウエハ
  • 200mmウエハは供給量頭打ちで需要に全く追いつかない
  • 200mm/300mm共に長期契約者への出荷がほとんどでスポットへ出回る量は限定的
  • これによりスポット価格は来期も上昇
  • 不足感が強いのは200mmウエハ
  • 需要が強いのは300mmウエハ
  • 最先端プロセス向け300mmウエハ需要はデータセンターとスマホが牽引
  • ポリッシュトウエハ需要はインターポーザ、ウエハ結合といった新トレンドが牽引
  • SUMCOの増産計画はスケジュール通りであるが余談を許さない状況
  • GlobalWafersのグリーンフィールド投資は1 ~ 2四半期遅れる可能性あり

 

では、この辺で。

拜拜~